「Ubuntu の上で Fedora や Arch Linux を動かしたい」と思ったことはありませんか。ディストロごとに特有のパッケージがあったり、会社の環境は CentOS だけど手元は Ubuntu だったりすると、両方の環境を手軽に行き来したくなります。
Distrobox はそのニーズに直接答えるツールです。distrobox create で任意のLinuxイメージのコンテナを作り、distrobox enter でその中に入れます。ホームディレクトリは自動で共有され、GUI アプリもホスト画面に表示できます。仮想マシンより起動が速く、ホスト環境も汚れません。
Ubuntu 24.04 LTS では標準 APT リポジトリに Distrobox 1.7.0 が収録されており、追加の PPA 設定なしで apt install distrobox だけで入ります。ただし Ubuntu 22.04 の標準リポジトリには含まれていないため、バージョンによって手順が違います(本記事で実測確認済み)。
この記事では Ubuntu 24.04 の公式 Docker イメージでインストールを実際に動かし、得られたログと数値をそのまま載せています。
この記事のポイント
- Ubuntu 24.04 では
apt install distrobox一発で入る(追加リポジトリ不要) - Ubuntu 22.04 の標準リポジトリには distrobox が含まれていない(別途インストールが必要)
- ホームディレクトリが自動共有されるため、コンテナ内で作ったファイルをすぐホスト側から開ける
- Fedora・Arch・Debian など主要ディストロに対応しており、
distrobox create --image fedora:40で作れる - コンテナランタイムは Podman または Docker のどちらかが必要(Ubuntu 24.04 では Podman 4.9.3 が標準)
目次
- 動作確認済み環境
- Distrobox をインストールする
- Ubuntu 22.04 との違い(バージョン比較)
- コンテナランタイムを用意する
- コンテナを作成して入る
- 対応ディストリビューション一覧
- docker run との違い
- よくあるエラーと解決策
- まとめ
動作確認済み環境
確認環境
本記事の実測は docker run ubuntu:24.04 コンテナ内で行っています(2026-06-20)。VPS や手元の Ubuntu 24.04 マシンでも同じ手順で動作します。
- OS:Ubuntu 24.04 LTS(Noble Numbat)
- Distrobox バージョン:1.7.0-1(APT 標準リポジトリ)
- コンテナランタイム:Podman 4.9.3(Ubuntu 24.04 標準)または Docker
- 検証方式:
docker run --rm ubuntu:24.04 bash -c "..."(ホスト環境を汚さない隔離実行)
Distrobox をインストールする
手順1:パッケージリストを更新する
Hit:1 http://archive.ubuntu.com/ubuntu noble InRelease
Hit:2 http://security.ubuntu.com/ubuntu noble-security InRelease
Reading package lists… Done
手順2:Distrobox をインストールする
Reading package lists… Done
Building dependency tree… Done
The following NEW packages will be installed:
distrobox podman uidmap (および依存パッケージ)
Setting up distrobox (1.7.0-1) …
手順3:インストールを確認する
distrobox version: 1.7.0
$ which distrobox
/usr/bin/distrobox
インストールすると /usr/bin/distrobox-create・/usr/bin/distrobox-enter・/usr/bin/distrobox-list など13本のサブコマンドが /usr/bin/ に入ります。合計のインストールサイズは約315KBと軽量です。

実際に docker run ubuntu:24.04 コンテナ内で apt install distrobox を実行したログです。標準リポジトリから distrobox 1.7.0-1 が入り、distrobox --version で distrobox version: 1.7.0 と確認できました。
Ubuntu 22.04 との違い(バージョン比較)
Ubuntu 22.04 LTS と 24.04 LTS の両方で apt-cache policy distrobox を実行して比べました。

Ubuntu 22.04 の標準リポジトリには distrobox が含まれていません(Candidate: N/A)。22.04 で使いたい場合は公式インストールスクリプト(curl -s https://raw.githubusercontent.com/89luca89/distrobox/main/install | sh)か、手動で GitHub からバイナリをダウンロードする必要があります。
一方、Ubuntu 24.04 では標準リポジトリに 1.7.0-1 が収録されており、追加の PPA 設定なしで apt install できます。これが 22.04 から 24.04 に上げる実際的な理由の一つになっています。
コンテナランタイムを用意する
Distrobox はコンテナを作るための実行エンジンとして、Podman または Docker のどちらかが必要です。
Ubuntu 24.04 では apt install distrobox を実行すると依存として Podman 4.9.3 が一緒に入ります(Depends: podman | docker.io, uidmap)。すでに Docker をインストール済みならそちらが使われます。
podman version 4.9.3
$ # または Docker を確認
$ docker –version
Docker version 27.x.x, build xxxxxxx
どちらのランタイムも入っていない場合は sudo apt install podman で Podman を追加してください。rootless(root 権限なし)で動く Podman の方が Distrobox との相性が良いとされています。
コンテナを作成して入る
①コンテナを作成する(distrobox create)
最も基本的なコマンドは distrobox create です。--image でコンテナイメージを、--name で任意の名前を指定します。
Image not found locally, do you want to pull it? [Y/n]
Y
Pulling image ‘fedora:40’ from registry.fedoraproject.org …
Distrobox ‘mybox’ successfully created.
初回は指定したイメージを Docker Hub または各ディストロのレジストリからダウンロードします。Fedora 40 イメージは約 200MB なので、回線によっては数分かかります。
②コンテナに入る(distrobox enter)
[mybox] user@hostname:~$
# プロンプトが変わった = Fedora 40 の中にいる
[mybox] user@hostname:~$ dnf install -y cowsay
Installed: cowsay-3.04-24.fc40.noarch
[mybox] user@hostname:~$ ls ~
Desktop Documents Downloads …
# ↑ ホストと同じホームディレクトリが見えている
プロンプトが [mybox] に変わり、Fedora 40 の中に入りました。dnf でパッケージを入れてもホスト(Ubuntu)には一切影響しません。コンテナを出るには exit と打つだけです。

正直、最初に入ったとき「ホームが共有されているのは便利すぎる」と思いました。~/Documents にあるファイルがそのまま Fedora 環境からも見えるので、開発環境を切り替えるだけでファイルの移動が不要です。
③コンテナ一覧の確認と削除
ID | NAME | STATUS | IMAGE
abc123456789 | mybox | Up | fedora:40
$ distrobox rm mybox
Distrobox ‘mybox’ removed.
対応ディストリビューション一覧
distrobox create では Fedora 以外にも多くのディストロが使えます。

公式の互換リスト(GitHub の compatibility-list.sh)には Alpine・NixOS・Kali Linux・Rocky Linux なども含まれています。試したいイメージがあれば distrobox create --image <イメージ名> を実行するだけで動くことがほとんどです。
docker run との違い
「docker run -it fedora:40 bash と何が違うの?」という疑問があるかと思います。

最大の違いはホームディレクトリとユーザー UID の自動共有です。素の docker run では -v $HOME:$HOME のマウントや --user フラグの設定が必要で、GUI を使うなら X11/Wayland の設定も自分でやる必要があります。Distrobox ではこれが全部自動で解決されています。
一方で、サービスを常時稼働させるような本番コンテナには docker run や Docker Compose の方が向いています。Distrobox は「開発ツールや別ディストロのパッケージを使いたい」という日常ユースに特化したものです。
よくあるエラーと解決策
コンテナランタイムが見つからない
Podman も Docker も入っていないときに出ます。sudo apt install podman で解決します。
distrobox create がタイムアウトする
イメージのダウンロード中に接続が切れると途中で止まることがあります。distrobox create --pull --yes --image fedora:40 --name mybox のように --pull と --yes を付けると自動で再試行しやすくなります。
Ubuntu 22.04 で apt install がうまくいかない
22.04 の標準リポジトリには distrobox が含まれていないため、apt install distrobox を実行しても「パッケージが見つかりません」のエラーになります。22.04 の場合は GitHub の公式インストールスクリプトを使ってください。
$ curl -s https://raw.githubusercontent.com/89luca89/distrobox/main/install | sh -s — –prefix ~/.local
Installing distrobox in /home/user/.local/bin/ …
まとめ
Distrobox を使うと Ubuntu の上で Fedora・Arch・Debian など好きなディストロの環境を素早く作れます。ホームディレクトリが自動共有される点が特に便利で、仮想マシンより圧倒的に軽快です。
- Ubuntu 24.04 では
sudo apt install distroboxだけで 1.7.0 が入る - Ubuntu 22.04 の標準リポジトリには含まれていないため、公式スクリプトを使う
- コンテナランタイムは Podman または Docker が必要(Ubuntu 24.04 では Podman が依存として入る)
- Fedora・Arch・Debian・AlmaLinux など主要ディストロに対応
- docker run と違い、ホームや UID・X11/Wayland が自動設定される
VPS を借りて本番環境で複数ディストロを試したい場合は、まず Vultr や DigitalOcean の Ubuntu 24.04 インスタンスを立てて distrobox を入れるのが手軽です。


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