Raspberry Pi k3sクラスター構築 — 自宅Kubernetes学習環境の完成

Kubernetes

この記事のポイント

  • Raspberry Pi 4 × 3台(マスター1台+ワーカー2台)で k3s クラスターを構築できます
  • curl -sfL https://get.k3s.io | sh - の1コマンドでマスターノードがセットアップ完了します
  • Raspberry Pi 4 と同じ ARM64(aarch64)の Ubuntu 22.04.5 LTS で動作確認済み(2026-06-14 実測)
  • 本記事では実際に rancher/k3s v1.32.5+k3s1 を起動し、kubectl get nodes や nginx デプロイの実出力まで確認しました
  • VPS でも同じ手順で動作します。物理マシンがなくても学習できます

「Kubernetes を勉強したいけど、クラウドの費用が怖い」「実際に手を動かして覚えたい」——そう感じていませんか?

自宅の Raspberry Pi 3台で k3s クラスターを構築すれば、月々のクラウド費用ゼロで本物の Kubernetes 環境が手に入ります。電気代を含めても月数百円程度です。

本記事では、Raspberry Pi 4(Ubuntu 22.04 LTS ARM64)で k3s クラスターを一から構築する手順を解説します。各コマンドは Raspberry Pi 4 と同じ aarch64 環境で実際に動かし、さらに 本物の k3s API サーバーを起動して kubectl の実出力・nginx の実デプロイまで確認した結果を載せています(2026-06-14 実測)。

この記事の検証環境について

手順は Ubuntu 22.04.5 LTS(ARM64 / aarch64) で検証しています。k3s 本体の動作確認は、Raspberry Pi と同じ ARM64 上で rancher/k3s:v1.32.5-k3s1 を実起動して行いました(コントロールプレーンを実際に立ち上げ、kubectl で操作)。Raspberry Pi OS ではなく Ubuntu を使う理由は、systemd・cgroup v2 の対応が安定しているためです。Pi 4 以上(RAM 2GB 以上)を推奨します。

目次

  1. k3s とは何か — フルKubernetes との違い
  2. クラスター構成を決める
  3. Raspberry Pi の準備(Ubuntu 22.04 LTS)
  4. SSH 鍵の設定
  5. k3s マスターノードをインストールする
  6. ワーカーノードを追加する
  7. kubectl でクラスターを確認する
  8. サンプルアプリをデプロイしてみる
  9. よくあるエラーと解決策
  10. まとめ

k3s とは何か — フルKubernetes との違い

k3s(ケースリー)は、Rancher(現SUSE)が開発した軽量版 Kubernetesです。通常の Kubernetes(kubeadm でセットアップするもの)はメモリを 1GB 以上消費しますが、k3s は単一バイナリで動き、Raspberry Pi のような小さなマシンでも快適に動作します。

比較項目 k3s(軽量版) kubeadm(フル版)
必要メモリ(マスター) 512MB〜 2GB〜
インストール方法 curl 1コマンド 複数ステップ・複雑
ARM64(Raspberry Pi)対応 公式バイナリあり 設定が必要
データストア SQLite(デフォルト) etcd クラスター
Ingress(入り口) Traefik 同梱 別途インストール
学習・自宅ラボ向け ★★★★★ ★★★☆☆

k3s の最大の利点は「本物の Kubernetes API と互換性がある」点です。kubectl コマンドがそのまま使えるので、k3s で学んだことはクラウドの EKS・GKE にも応用できます。実際に後述の検証では、k3s に対して kubectl get nodeskubectl create deployment といった標準の kubectl コマンドがそのまま通りました。

クラスター構成を決める

今回は 3台構成(マスター1台+ワーカー2台)で構築します。マスターは制御役、ワーカーは実際にアプリを動かす役割です。kubectl を打つ開発PC からはマスターの API サーバー(ポート 6443)に接続します。

k3s クラスター 3ノード構成図(概念図)
k3s クラスター 3ノード構成図(概念図)
ノード 役割 推奨スペック IPアドレス例
k3s-master コントロールプレーン Pi 4 8GB 192.168.1.100
k3s-worker01 ワーカーノード Pi 4 4GB 192.168.1.101
k3s-worker02 ワーカーノード Pi 4 4GB 192.168.1.102
著者アイコン
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Pi 4 を3台揃えなくても大丈夫です。最初はマスター1台だけでも動きます。実際この記事の検証も、まずマスター(コントロールプレーン)1台を立ち上げて動作を確認しました。ワーカーは後から K3S_URLK3S_TOKEN を渡すだけで追加できるので、まずマスターだけで試してみましょう。

Raspberry Pi の準備(Ubuntu 22.04 LTS)

①事前に設定する項目(全台共通)

Pi それぞれに Ubuntu 22.04 LTS をインストールしたあと、以下の設定を行います。まず各 Pi のホスト名を設定します。




ubuntu@ubuntu: ~
$ sudo hostnamectl set-hostname k3s-master
$ cat /etc/os-release | grep PRETTY_NAME
PRETTY_NAME=”Ubuntu 22.04.5 LTS”
$ uname -m
aarch64

次に /etc/hosts に全ノードの IP を追記します。




ubuntu@k3s-master: ~
$ sudo tee -a /etc/hosts <<‘EOF’
192.168.1.100 k3s-master
192.168.1.101 k3s-worker01
192.168.1.102 k3s-worker02
EOF

②Ubuntu 22.04 ARM64 の動作確認(実測)

k3s は cgroup v2 を前提とします。Raspberry Pi 4 と同じ aarch64 環境で、OS バージョン・アーキテクチャ・cgroup の状態を実際に確認しました。

Ubuntu 22.04.5 LTS ARM64 環境確認(実測)
Ubuntu 22.04.5 LTS ARM64 環境確認(実測)

実測結果のポイントです。

  • OS: Ubuntu 22.04.5 LTS (Jammy Jellyfish)
  • アーキテクチャ: uname -maarch64dpkg --print-architecturearm64(Raspberry Pi 4 と同一 ABI)
  • cgroup: /sys/fs/cgroup/cgroup.controllers が存在し cpuset cpu io memory hugetlb pids rdma を提供 → cgroup v2 が有効。これが k3s 動作の前提です

③スワップを無効にする(k3s 動作に必要)

Kubernetes ではスワップが有効だとノードが正常に起動しないことがあります。無効化しておきましょう。




ubuntu@k3s-master: ~
$ sudo swapoff -a
$ sudo sed -i ‘/swap/d’ /etc/fstab
$ free -h | grep Swap
Swap: 0B 0B 0B

SSH 鍵の設定

マスターノードからワーカーノードにパスワードなしで接続できるよう、SSH 鍵を設定します。SSH は暗号化された遠隔ログインの仕組みです。

①マスターで ED25519 鍵を生成する(実測)

Ubuntu 22.04 ARM64 で SSH 鍵生成を実際に実行した結果です。

SSH 鍵生成(ubuntu:22.04 ARM64 実測)
SSH 鍵生成(ubuntu:22.04 ARM64 実測)
  • SSH バージョン: OpenSSH_8.9p1 Ubuntu-3ubuntu0.15(実測)
  • 鍵方式: ED25519(RSA より短くてセキュリティが高く、Pi でも生成が速い)



ubuntu@k3s-master: ~
$ ssh-keygen -t ed25519 -f ~/.ssh/k3s_node_key -N ” -C ‘k3s-master@linuxlab’
Generating public/private ed25519 key pair.
Your identification has been saved in /home/ubuntu/.ssh/k3s_node_key
Your public key has been saved in /home/ubuntu/.ssh/k3s_node_key.pub
The key fingerprint is:
SHA256:eE60Wcj76nBxp/qYMEjV7PwA2fWn2x49DwPw9Q56DcM k3s-master@linuxlab

②公開鍵をワーカーノードに配置する




ubuntu@k3s-master: ~
$ ssh-copy-id -i ~/.ssh/k3s_node_key.pub ubuntu@k3s-worker01
Number of key(s) added: 1
$ ssh-copy-id -i ~/.ssh/k3s_node_key.pub ubuntu@k3s-worker02
Number of key(s) added: 1
$ ssh -i ~/.ssh/k3s_node_key ubuntu@k3s-worker01 “echo ‘ok'”
ok

k3s マスターノードをインストールする

①依存パッケージの確認(実測)

k3s は Pod 間のネットワーキングに iptables などを使います。Ubuntu 22.04 ARM64 で実際にインストールしてバージョンを確認し、あわせて公式インストーラへの到達性も確認しました。

k3s 依存パッケージ確認(ARM64 実測)
k3s 依存パッケージ確認(ARM64 実測)

実測で確認した内容です。

  • iptables v1.8.7 (nf_tables) — Pod 間ネットワーキングに必要
  • conntrack v1.4.6 — ネットワーク接続追跡
  • socatkubectl port-forward などで使うポートフォワーディング
  • k3s インストーラー https://get.k3s.ioHTTP/2 200 で応答(content-length 38305、先頭は #!/bin/sh の sh スクリプト)も確認(2026-06-14)



ubuntu@k3s-master: ~
$ sudo apt-get update && sudo apt-get install -y iptables conntrack socat
$ iptables –version
iptables v1.8.7 (nf_tables)
$ conntrack –version
conntrack v1.4.6 (conntrack-tools)

②k3s マスターノードをインストールする(ワンライナー)

正直、これが k3s の一番驚くポイントです。たった1コマンドでマスターノードのセットアップが完了します。




ubuntu@k3s-master: ~
$ curl -sfL https://get.k3s.io | sh –
[INFO] Finding release for channel stable
[INFO] Using v1.32.5+k3s1 as release
[INFO] Downloading binary …/v1.32.5+k3s1/k3s-arm64
[INFO] Installing k3s to /usr/local/bin/k3s
[INFO] Creating /usr/local/lib/systemd/system/k3s.service
[INFO] systemd: Enabling k3s unit
Created symlink …/multi-user.target.wants/k3s.service
[INFO] systemd: Starting k3s

k3s-arm64 という ARM64 用バイナリがダウンロードされる点に注目してください。Raspberry Pi(aarch64)向けのバイナリが公式に用意されています。インストール後、k3s --version でバージョンを確認できます。




ubuntu@k3s-master: ~
$ k3s –version
k3s version v1.32.5+k3s1 (8e8f2a47)
go version go1.23.8

このバージョン文字列は、実際に rancher/k3s:v1.32.5-k3s1 を起動して取得した実出力です。

③ノードトークンを確認する(後で必要)

ワーカーノードを追加するときに必要なトークンを記録しておきます。




ubuntu@k3s-master: ~
$ sudo cat /var/lib/rancher/k3s/server/node-token
K10xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx::server:xxxxxxxx
# このトークンをメモしておく

ワーカーノードを追加する

各ワーカーノードで以下を実行します。K3S_URL にはマスターの IP、K3S_TOKEN には先ほどのトークンを指定します。マスターと同じワンライナーに環境変数を足すだけです。




ubuntu@k3s-worker01: ~
$ curl -sfL https://get.k3s.io | \
K3S_URL=https://192.168.1.100:6443 \
K3S_TOKEN=K10xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx::server:xxxxxxxx \
sh –
[INFO] Using v1.32.5+k3s1 as release
[INFO] Installing k3s to /usr/local/bin/k3s
[INFO] Creating /usr/local/lib/systemd/system/k3s-agent.service
Created symlink …/multi-user.target.wants/k3s-agent.service

ここだけは順番を間違えると動きません。マスターノードが Ready になってからワーカーを追加してください。マスターが起動中にトークンを取得しようとすると空ファイルが返ってきます。

k3s-worker02 でも同じコマンドを実行します(IPとトークンは同じ)。

kubectl でクラスターを確認する

①ノードとシステム Pod を確認する(実測)

ここからは実際に rancher/k3s v1.32.5+k3s1 を起動し、kubectl で本物の API サーバーから返ってきた実出力です。本記事の検証ではマスター(コントロールプレーン)1ノードで動作を確認しました。

実 k3s クラスターの kubectl 実出力(実測スクリーンショット)
実 k3s クラスターの kubectl 実出力(実測スクリーンショット)

注目したいのは kube-system 名前空間の Pod です。

  • coredns(クラスター内DNS)
  • local-path-provisioner(ローカルストレージの自動払い出し)
  • metrics-server(リソース使用量の収集)

これらが k3s に最初から同梱されていて、起動直後に Running になっているのが実出力で確認できます。フル Kubernetes では別途インストールが必要な部分です。3台構成にした場合は、ここに k3s-worker01 / k3s-worker02Ready として並びます。

②ARM64 のパフォーマンスを確認(実測)

自宅クラスターとして十分な計算力があるか、aarch64 環境で sysbench を実測しました。

sysbench CPU/メモリ ベンチマーク ARM64(実測)
sysbench CPU/メモリ ベンチマーク ARM64(実測)

ベンチ値の読み方(重要)

上の数値(CPU 平均 29,159 events/sec、メモリ転送 78,325 MiB/sec)は Apple Silicon の arm64 ネイティブコンテナで計測した実測値です。Raspberry Pi 4(Cortex-A72 1.5GHz)実機はこの数十分の一で、sysbench CPU で概ね 400〜600 events/sec が目安です。同じ aarch64 でもチップによって性能差が大きい点に注意してください。とはいえ k3s のコントロールプレーンを動かすには Pi 4 でも十分です。

サンプルアプリをデプロイしてみる

クラスターが動いたら、実際に nginx をデプロイして動作確認しましょう。ここも実際の k3s クラスターで実行した結果です。

k3s への nginx デプロイ実出力(実測スクリーンショット)
k3s への nginx デプロイ実出力(実測スクリーンショット)



ubuntu@k3s-master: ~
$ kubectl create deployment nginx –image=nginx:stable
deployment.apps/nginx created
$ kubectl expose deployment nginx –port=80 –type=NodePort
service/nginx exposed
$ kubectl get pods -l app=nginx
nginx-d7b8c5b4b-skgl5 1/1 Running 0 8s
$ kubectl get svc nginx
NAME TYPE CLUSTER-IP EXTERNAL-IP PORT(S) AGE
nginx NodePort 10.43.182.67 <none> 80:30818/TCP 7s

Pod は 8秒で Running になり、NodePort 30818(数字はランダム)で公開されました。実際にこのサービスへブラウザでアクセスすると、nginx のウェルカムページが表示されます。下のスクリーンショットは、k3s クラスターが配信した nginx を kubectl port-forward 経由で実際にブラウザで開いて撮影したものです。

k3s 上の nginx ウェルカムページ(実測スクリーンショット)
k3s 上の nginx ウェルカムページ(実測スクリーンショット)

「Welcome to nginx!」が表示されれば、クラスター上で本当にコンテナが動き、外からアクセスできている証拠です。本番の Pi クラスターでは、ブラウザで http://192.168.1.100:30818 のように「マスターのIP:NodePort」へアクセスします。

よくあるエラーと解決策

①ノードが NotReady のまま動かない

よくある原因

  • スワップが有効になっている(必ず swapoff -a で無効にする)
  • cgroup v2 が有効でない(Ubuntu 22.04 は標準で有効。本記事でも cgroup.controllers の存在を実測で確認済み)
  • iptables が古いバージョン(Ubuntu 22.04 の 1.8.7 では問題なし)



ubuntu@k3s-master: ~
$ sudo systemctl status k3s
● k3s.service – Lightweight Kubernetes
Active: active (running)
$ sudo journalctl -u k3s -n 20 –no-pager
# ログでエラーメッセージを確認する

②ワーカーノードが追加できない

トークンが間違っている場合が多いです。マスターで以下を確認してください。




ubuntu@k3s-master: ~
$ sudo cat /var/lib/rancher/k3s/server/node-token
# ファイルが空なら k3s の起動が完了していない → 少し待ってから再度確認
$ sudo systemctl is-active k3s
active

③ARM64 用イメージが見つからない

Docker Hub のイメージが ARM64 に対応していない場合があります。nginxnginx:stable のような主要イメージは multi-arch 対応なので、本記事の検証でも問題なく aarch64 で動きました。マイナーなイメージを使うときだけ注意してください。




ubuntu@k3s-master: ~
$ kubectl get events –sort-by=’.lastTimestamp’ | tail -5
Warning Failed exec format error / no match for platform
# 解決策: arm64v8/ プレフィックスのイメージか multi-arch イメージを選ぶ
$ kubectl set image deployment/myapp myapp=arm64v8/nginx

まとめ

Raspberry Pi 3台で k3s クラスターを構築する手順をまとめます。

  • Ubuntu 22.04.5 LTS ARM64(aarch64)は Raspberry Pi 4 と同じアーキテクチャで、cgroup v2 有効を実測で確認(2026-06-14)
  • k3s のインストールは curl -sfL https://get.k3s.io | sh - のワンライナーで完了し、ARM64 用バイナリ k3s-arm64 が落ちてくる
  • ワーカーノード追加は K3S_URLK3S_TOKEN を指定するだけ
  • 実際に rancher/k3s v1.32.5+k3s1 を起動し、CoreDNS・metrics-server・local-path-provisioner が同梱で Running になることを実出力で確認
  • nginx を1コマンドでデプロイ → 8秒で Running → ブラウザでウェルカムページ表示まで実測で確認
  • kubectl コマンドはクラウド Kubernetes(EKS・GKE)と互換性があるので、スキルがそのまま活かせます

物理的な Raspberry Pi がなくても、VPS を使えば同じ k3s クラスターを構築できます。Vultr の安価なプラン(1vCPU・1GB RAM)は k3s のワーカーノード1台として十分使えますし、メモリの大きいプランならマスターも問題なく動きます。

VPS の選び方やリージョン別の実測速度は、別記事「VPS比較・実測ベンチ」でくわしく解説しています。[LINK_X_ARTICLE]

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