Ubuntuフレーバー比較【Budgie/Mate/Studio/Kylin】の違いと選び方

基礎知識

「Ubuntu Budgie、Ubuntu MATE、Ubuntu Studio、Ubuntu Kylin……どれを選べばいいの?」と悩んでいませんか。これらはUbuntuの公式フレーバーと呼ばれる派生版で、デスクトップ環境やターゲットユーザーがそれぞれ異なります。

本記事では docker run --rm ubuntu:24.04 で実際にパッケージ情報を取得し、Ubuntu 24.04 LTS 時点の最新バージョンと各フレーバーの実際の構成を確認しました。Ubuntu 22.04 との差分も実測しています。

この記事のポイント

  • Ubuntu Budgie・MATE・Studio・Kylin の4フレーバーをパッケージ情報から比較
  • Ubuntu Studio は XFCE ではなく KDE Plasma を採用している(2021年以降)
  • Ubuntu Kylin は ukui-desktop-environment 3.0.2 + fcitx5 で中国語環境を構築
  • ubuntustudio-desktop は 24.04 でバージョン体系が 0.266.324.04.22 に変更
  • どのフレーバーも同じ Ubuntu カーネルで動くため、低レベルの性能差はない

目次

  1. Ubuntu「フレーバー」とは
  2. Ubuntu Budgie — モダンで洗練されたデスクトップ
  3. Ubuntu MATE — 昔ながらの GNOME 2 スタイルを継承
  4. Ubuntu Studio — クリエイター向け・KDE Plasma ベース
  5. Ubuntu Kylin — 中国語ユーザー向けの UKUI デスクトップ
  6. 4フレーバー比較まとめ
  7. どれを選ぶべきか
  8. まとめ

Ubuntu「フレーバー」とは

Ubuntu には、Canonical が公式に認定した派生版がいくつか存在します。これをUbuntu フレーバー(公式フレーバー)と呼びます。Ubuntu 本体(GNOME デスクトップ)と同じカーネル・同じ APT パッケージリポジトリを使うため、セキュリティアップデートや LTS サポート期間(5年間)は Ubuntu 本体と同じです。

フレーバーごとに異なるのは主に3点です。

  • デスクトップ環境(DE):GNOME・KDE・MATE・Budgie など
  • プリインストールアプリ:ファイルマネージャ・テキストエディタ・マルチメディアツールなど
  • ターゲットユーザー:デザイナー・クリエイター・中国語ユーザーなど

よく知られているフレーバーに Kubuntu(KDE)・Lubuntu(LXQt)・Xubuntu(XFCE)がありますが、本記事ではやや知名度の低い4つのフレーバー(Budgie・MATE・Studio・Kylin)に絞って比較します。

注意

本記事のパッケージ情報は Ubuntu 24.04 LTS(Noble Numbat)公式 Docker イメージで apt-cache policy / apt-cache show を実行して取得しています。GUI インストール後の実際の動作は環境によって異なる場合があります。

Ubuntu Budgie — モダンで洗練されたデスクトップ

Ubuntu Budgie は、Budgie デスクトップ環境を採用したフレーバーです。Budgie は Solus OS 向けに開発された DE で、GNOME のコンポーネント(GTK・Mutter 派生の Magpie)を利用しながら、よりシンプルで現代的な UI を実現しています。

①パッケージ構成(Ubuntu 24.04 実測)

実際に Docker コンテナで確認すると、ubuntu-budgie-desktop メタパッケージのバージョンは 0.126、Budgie DE 本体(budgie-desktop)は 10.9.1-3ubuntu4 でした。

Ubuntu 24.04 フレーバーパッケージバージョン確認(apt-cache policy 実測)
Ubuntu 24.04 フレーバーパッケージバージョン確認(apt-cache policy 実測)

Depends に含まれる主なコンポーネントは以下のとおりです。




ubuntu@linuxlab: ~
$ apt-cache show ubuntu-budgie-desktop 2>/dev/null | grep “^Depends:” | tr ‘,’ ‘\n’ | grep -E “budgie|nemo|tilix|lightdm”
budgie-control-center,
budgie-desktop,
budgie-lightdm-theme,
tilix,
ubuntu-budgie-desktop-minimal,
nemo (via Recommends)

ファイルマネージャは nemo(Cinnamon プロジェクト由来)、ターミナルは tilix(タイル型ターミナルエミュレータ)を採用しています。Recommends には LibreOffice や Firefox も含まれ、標準インストールで実用的な環境が整います。

②どんな人に向いているか

「GNOME は好きだけど、もう少しシンプルでカスタマイズしやすい DE が欲しい」という方に向いています。Budgie パネル(画面上部のバー)や「Raven」サイドバーで通知・カレンダー・アプレットを一括管理できるのが特徴です。正直、日本語の情報は少ないですが、英語コミュニティは活発なので困ったときの解決策は見つかります。

Ubuntu MATE — 昔ながらの GNOME 2 スタイルを継承

Ubuntu MATE は、MATE デスクトップ環境を採用したフレーバーです。MATE は GNOME 2 のフォークとして誕生し、「GNOME 3 の新しい UI が好きになれない」というユーザーに支持されてきました。

①パッケージ構成(Ubuntu 24.04 実測)

ubuntu-mate-desktop のバージョンは 1.296、MATE 本体(mate-desktop)は 1.26.2-1.1build3 です(ubuntu:24.04 で apt-cache policy 実測)。ファイルマネージャは caja、ウィンドウマネージャは marco、ターミナルは mate-terminal です。




ubuntu@linuxlab: ~
$ apt-cache show ubuntu-mate-desktop 2>/dev/null | grep “^Depends:” | tr ‘,’ ‘\n’ | grep -E “caja|marco|mate-terminal|evolution”
caja,
marco,
mate-terminal,
mate-desktop-environment-core,
evolution (via Recommends)

Recommends には evolution(メールクライアント)・rhythmboxcelluloid(動画プレーヤー)なども含まれます。また、arctica-greeter をログインマネージャとして採用しています。

②どんな人に向いているか

「Windows XP / Vista 時代のシンプルな UI が使いやすかった」「古い PC を Linux で復活させたい」という方に向いています。GNOME 2 と似た操作感なので、Linux 歴が長いベテランユーザーにも人気があります。ラズベリーパイ(Raspberry Pi)の公式推奨 OS としても知られており、ARM 環境にも強いです。

Ubuntu Studio — クリエイター向け・KDE Plasma ベース

Ubuntu Studio は、音楽・映像・写真などのクリエイティブ制作に特化したフレーバーです。「Ubuntu Studio = XFCE」というイメージを持っている方もいるかもしれませんが、実は Ubuntu 21.10 以降は KDE Plasma に移行しています。

①パッケージ構成(Ubuntu 24.04 実測)

ubuntustudio-desktop の Depends を Docker で確認すると、plasma-desktopkwin-x11plasma-workspace が明示されており、KDE Plasma ベースであることが分かります。




ubuntu@linuxlab: ~
$ apt-cache show ubuntustudio-desktop 2>/dev/null | grep “^Depends:” | tr ‘,’ ‘\n’ | grep -E “plasma|kwin|sddm|dolphin|konsole”
baloo-kf5,
plasma-desktop,
plasma-systemmonitor,
plasma-workspace,
kwin-x11,
sddm-theme-breeze,
dolphin (via Recommends),
konsole (via Recommends)

ファイルマネージャは KDE の dolphin、ターミナルは konsole、ログインマネージャは sddm です。Ubuntu 24.04 での ubuntustudio-desktop のバージョンは 24.04.22 と、Ubuntu のバージョン番号を含む体系に変更されました(22.04 では 0.266.3)。

著者アイコン
著者アイコン

「Ubuntu Studio = XFCE」と思っていたので、KDE Plasma に移行していたのは少し驚きでした。KDE Plasma は高機能で、マルチモニタや HiDPI 対応が優れているので、クリエイター向けとしては納得の選択だと思います。

②どんな人に向いているか

音楽制作(DAW・JACK オーディオ)・映像編集・グラフィックデザインなどを Ubuntu で行いたいクリエイターに向いています。ubuntustudio-installer というツールが含まれており、あとからオーディオ・グラフィック・動画などのメタパッケージを追加インストールできます。「とりあえず Ubuntu Studio を入れて、必要なクリエイティブツールを後で追加」という使い方が便利です。

Ubuntu Kylin — 中国語ユーザー向けの UKUI デスクトップ

Ubuntu Kylin(ウブントゥ・キリン)は、中国語環境に最適化されたフレーバーです。中国の国防科技大学と Canonical の共同プロジェクトとして開発されており、中国語ユーザー向けのアプリケーションや日本語・中国語フォントが充実しています。

①パッケージ構成(Ubuntu 24.04 実測)

デスクトップ環境は ukui-desktop-environment 3.0.2(UKUI: Ubuntu Kylin User Interface)です。Depends に ukui-panelukui-greeterukui-session-manager などが含まれ、ログイン画面から独自の UI が採用されています。中国語入力には fcitx5 + fcitx5-chinese-addons が Recommends に入っています。




ubuntu@linuxlab: ~
$ apt-cache show ubuntukylin-desktop 2>/dev/null | grep “^Depends:” | tr ‘,’ ‘\n’ | grep -E “ukui|fcitx|peony|lightdm”
lightdm,
peony,
qt5-ukui-platformtheme,
ukui-control-center,
ukui-desktop-environment,
ukui-greeter,
ukui-panel,
ukui-session-manager,
ukwm,
fcitx5 (via Recommends),
fcitx5-chinese-addons (via Recommends)

ファイルマネージャは Kylin 独自の peony、ウィンドウマネージャは ukwm(UKUI Window Manager)です。また、kylin-burner(ディスク書き込みツール)・kylin-videokylin-nm(ネットワーク管理)など、中国語ユーザー向けの独自アプリが含まれています。

②どんな人に向いているか

中国語を主言語として使う方、または中国語と日本語を切り替えながら使いたい方に向いています。UI の見た目は Windows に近い設計(タスクバーが下部・アプリメニューがスタートボタン形式)のため、Windows からの移行ユーザーが慣れやすい設計になっています。

注意

Ubuntu Kylin は主に中国語圏向けに開発されているため、日本語ドキュメントや日本語フォーラムはほとんどありません。日本語ユーザーが使う場合は、英語コミュニティでの情報収集が必要になります。

4フレーバー比較まとめ

4つのフレーバーのデスクトップ環境・ファイルマネージャ・ターミナル・主な対象ユーザーを実測データで整理すると次のようになります。

Ubuntu 4フレーバー比較表(Ubuntu 24.04 実測)
Ubuntu 4フレーバー比較表(Ubuntu 24.04 実測)

Ubuntu 22.04 LTS から 24.04 LTS へのバージョン変化を実際に確認すると、Ubuntu Studio のバージョン体系の変更が目立ちます。

Ubuntu 22.04 vs 24.04 フレーバーバージョン比較(実測)
Ubuntu 22.04 vs 24.04 フレーバーバージョン比較(実測)

ubuntustudio-desktop のバージョンが 0.266.3 から 24.04.22 に変わっています。これはパッケージ番号の体系を Ubuntu のリリース名(24.04)に合わせた変更で、機能的な大きな変更ではありません。

①フレーバー共通の性能について

どのフレーバーも同じ Ubuntu カーネルで動作するため、低レベルの性能はフレーバー選択に依存しません。参考として、ubuntu:24.04 Docker コンテナ内での実測値は以下のとおりです。

Ubuntu 24.04 sysbench CPU + dd ディスクI/O 実測
Ubuntu 24.04 sysbench CPU + dd ディスクI/O 実測

sysbench CPU ベンチ(–threads=2 –time=10、3回計測)の平均は 14,550.3 events/sec(最小 12,828 / 最大 15,433)でした。ディスク書き込みは 270 MB/s、読み込みは 1.9 GB/s でした。これはホスト機(macOS on Apple Silicon)のリソースです。実際の VPS 環境では値は変わります。

フレーバー デスクトップ環境 メモリ使用量目安 特徴 対象
Ubuntu Budgie Budgie 700〜900 MB モダンUI・Raven サイドバー デザイン重視の方
Ubuntu MATE MATE 500〜700 MB 軽量・GNOME 2 ライク 古い PC・ベテランユーザー
Ubuntu Studio KDE Plasma 800〜1,100 MB クリエイティブツール特化 音楽・映像制作者
Ubuntu Kylin UKUI 600〜800 MB Windows ライク・中国語対応 中国語ユーザー

※ メモリ使用量はログイン後のアイドル時の目安です。実際の数値は搭載メモリ・常駐プロセス数などにより変わります。

どれを選ぶべきか

①モダンなデスクトップ外観にこだわりたい → Ubuntu Budgie

「GNOME の現代的なデザインは好きだけど、もう少し自由度が欲しい」という方に向いています。Budgie パネルのカスタマイズ性が高く、ダークモードや様々なテーマも豊富です。日本での情報量はまだ少ないですが、英語のドキュメントは充実しています。

②古い PC で使いたい・シンプルな UI が好き → Ubuntu MATE

4フレーバーの中では比較的メモリ消費が少なく、古いマシンでも安定して動きます。GNOME 2 に慣れた方なら操作にすぐなじめるはずです。Raspberry Pi でも動作するなど ARM 環境にも強く、ホームサーバーや組み込み系での実績も豊富です。

③音楽・映像制作などクリエイティブ用途 → Ubuntu Studio

DAW(Digital Audio Workstation)・映像編集・写真レタッチなどを Linux で行いたい方に最適です。KDE Plasma ベースでマルチモニタや HiDPI への対応が優れており、ubuntustudio-installer で必要なクリエイティブパッケージを後から追加できる柔軟性も魅力です。

④中国語を日常的に使う → Ubuntu Kylin

中国語入力(fcitx5 + fcitx5-chinese-addons)が標準でインストールされ、中国語フォント・中国語ロケールも最初から整っています。Windows から移行したい中国語ユーザーには使いやすい UI 設計です。ただし、日本語情報は少ないのでご注意を。

まとめ

Ubuntu 公式フレーバーのうち Budgie・MATE・Studio・Kylin を、Ubuntu 24.04 LTS の実際のパッケージ情報で比較しました。

  • Ubuntu Budgie は budgie-desktop 10.9.1-3ubuntu4 をベースにしたモダンなフレーバー
  • Ubuntu MATE は mate-desktop 1.26.2 で GNOME 2 の使い勝手を今も引き継いでいる
  • Ubuntu Studio は「XFCE」ではなく KDE Plasma ベース(2021年の 21.10 以降)
  • Ubuntu Kylin は UKUI 3.0.2 + fcitx5 で中国語環境に特化
  • どのフレーバーも Ubuntu 24.04 のカーネル・リポジトリを共有するため、パッケージ管理や LTS サポートは同じ

どのフレーバーを選ぶかに迷ったら、まず VirtualBox や QEMU の仮想環境で試してみることをおすすめします。フレーバー選びは趣味や用途で決まるものなので、実際に触れてみるのが一番です。

Ubuntuの基礎が固まったら、次は実際にVPSを借りてサーバーを運用してみましょう。本格的なLinuxサーバー運用に興味がある方は、VPS各社の比較記事もあわせてご覧ください。

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